基本コンセプト
筋肉を調律、調整、同調させて、筋拘縮を解除する徒手療法。
カウンターストレイン、筋膜リリース、仙腸関節調節法、MET、MPFなどの既成手技を独自改良した新手技を駆使して深層部を含めた體全体の筋肉をニュートラルな状態に近づけます。
筋拘縮とは
筋肉が硬く縮こまる現象は数パターンに区別されますが、私たちは標準医療が見逃している筋肉がロックして硬く縮こまった状態(筋肉のロック現象)を含めて筋拘縮と呼んでいます。
筋肉が硬く縮こまったまま活性化しない原因が様々ある中で下記を重要視しています。
・栄養不足や酸素欠乏によるATP生成不足
・老廃物蓄積による組織劣化
・筋紡錘による筋肉を守る仕組み
・筋膜の癒着による機能不全と代謝障害
Blood Trigger Point
BTPとはBlood Trigger Pointの略で血流が滞りやすい要衝を指しています。MTR Method™️では血流を最適化させる筋肉チューニングがメインになりますが、チューニングをかける部位には優先順位があります。いくら栄養を改善しても、筋拘縮によって血管が圧迫されて血流が滞っていればその栄養が足先まで届かないので栄養改善の効果は半減するでしょう。だから要衝となる筋拘縮を確実に解除し血流を確保していくことで酸素と栄養が行き渡りチューニング効果も上がってきます。チューニングスペシャリストたちは、チューニングをかけて血流を促進することで同じ部位でも筋肉の反応速度が有意に変わっていく事を指先で確認しています。體の末端にいけばいくほど、大循環の要衝を開放する事の効果は計り知れません。
椎間板ヘルニア
標準医療の診断では大腿骨と脛骨の間にある内側と外側の半月板が度重なる負荷により損傷することで、痛みや可動域制限を引き起こすとされてます。腰痛で受診して腰椎椎間板ヘルニアと言われたアスリートも多いと思います。診断された腰椎椎間板ヘルニアの症状としては大腰筋、小臀筋、腰方形筋、多裂筋といった腹部から腰部の表層から深層にある筋拘縮を解除することで改善される場合があります。
半月板損傷
標準医療の診断では大腿骨と脛骨の間にある内側と外側の半月板が度重なる負荷により損傷することで、痛みや可動域制限を引き起こすとされてます。損傷具合が重度の場合には手術をする選手も多いと思います。診断された半月板損傷ではロッキングと呼ばれる症状があり外側広筋、内側広筋、膝窩筋、大腿二頭筋といった膝関節周囲や二関節筋と呼ばれる隣り合う関節から繋がる筋拘縮を解除することで改善される場合があります。やむを得ず手術する場合もクリーニングまでは問題ないと考えていますが、全摘出してしまうと骨格のバランスが崩れて下肢部に筋拘縮が蓄積しやすくなる可能性があると考えています。
前十字靭帯断裂
標準医療の診断では膝関節の深部にある靭帯が度重なる膝が内側に入る状態(ニーイン)による負荷により損傷または断裂して痛みや可動域制限、脚で支える際に力が入らないなどの症状を引き起こすとされてます。サッカーに多い受傷の1つで手術後に長期離脱してしまう選手が多いと思います。大きな要因としては膝関節周囲の強い筋拘縮の影響もありますが、サッカーのスポーツ動作特性により膝下から「足」の筋拘縮が蓄積してくることで足関節の可動域制限が閾値を超えてしまい捻りや高負荷の衝撃を逃すことができない選手が重度の受傷する場合が多くみられます。
足関節捻挫
標準医療の診断では足首の急激な伸張により靭帯が伸ばされ、損傷または断裂を伴い痛みや可動域制限を引き起こすとされてます。サッカー選手では1度は受傷したことがあるのではないのでしょうか。軽度の捻挫1〜2週間安静などの診断では急性の筋拘縮であることが多く、一般的なRICE処置では自然な反応を阻害してしまうことで可動域制限や違和感などの後遺症が残る場合もあります。早期に足首周りの筋拘縮を解除して血流を確保することが回復とパフォーマンス低下予防のためには重要になります。
大腿二頭筋肉離れ
標準医療の診断では急激な大腿部後面の伸張や過度な脚の振り上げにより、筋肉の損傷または断裂を伴い強い痛みや可動域制限を引き起こすとされます。坐骨部に近い箇所で重度の断裂では手術をする選手もいます。特にスプリント時の急激なダッシュで受傷するアスリートが多い箇所とされています。軽度の肉離れ3〜4週間安静などの診断では急性の筋拘縮であることが多く、筋拘縮を解除することで痛みや可動域制限が改善される場合があります。また重度の肉離れ6〜8週間安静などの診断では筋損傷によって炎症がひどい場合があります。筋拘縮の解除によって炎症が促進され治癒の早期化が期待でき、4週間程度で回復することも可能です。ストップ&ダッシュがや急激なスプリント、キック動作により徐々に蓄積していく筋拘縮は、早期に解除しなければ重症化または繰り返し受傷する場合も多くみられます。
下腿三頭筋肉離れ
標準医療の診断では急激な脹脛の伸張と過度に力を入れた収縮により、筋肉の損傷または断裂を伴い強い痛みや可動域制限を引き起こすとされます。特にジャンプ時に受傷するアスリートが多い箇所とされています。軽度の肉離れ3〜4週間安静などの診断では急性の筋拘縮であることが多く、筋拘縮を解除することで痛みや可動域制限が改善される場合があります。サイドステップの繰り返しや度重なるジャンプヘッドにより徐々に蓄積していく筋拘縮は、早期に解除しなければ重症化または繰り返し受傷する場合も多くみられます。足首が太く硬く縮こまった状態のサッカー選手が散見します。これは筋拘縮の蓄積によって血流障害を起こし老廃物が排出できず滞留している結果です。その太い足首は筋肉ではなくただの浮腫みです。放置していると非常に危険ですから注意が必要です。
骨棘・骨片(関節ねずみ)
標準医療の診断では、アスリートに発生する骨棘、骨片は繰り返されるストレスや関節周囲の骨折などによって生じるとされています。骨折などによって生じた骨片は骨癒合不全により関節内に移動し関節内遊離体「関節ねずみ」を引き起こします。「関節ねずみ」が引っかかると強い疼痛や可動域制限が出現します。関節内の骨片や骨棘に対してクリーニング手術はやむを得ませんが、そもそもなぜ骨が変性するのかを考える必要があります。骨棘や骨片が足関節や膝関節にできるのは骨折後だけでなく、ケア不足によって筋拘縮が蓄積し、関節に過度な負荷が加わることで骨や軟骨が削られていきます。クリーニングで取り除いたとしても、骨が変性した原因である筋拘縮を減らしていかないとまた同じことを繰り返すことになります。
中足骨骨折
標準医療の診断では中足骨骨折は日々のトレーニングなど繰り返される負荷によって生じる疲労骨折が多いとされています。特にサッカー選手に多いのは第5中足骨の疲労骨折(Jones骨折)です。第5中足骨骨折の好発部位は血流が乏しく、手術適応になることがあります。サッカーの特性上、スパイクによる「足」への持続的な圧迫ストレスや、足全体の筋拘縮の蓄積によって血流障害を起こしエネルギー代謝(酸素と栄養素の不足)が滞って骨自体が弱くなってしまいます。この状態が続くと、通常では骨が折れないような切り返し動作や片足で踏み込んだ際に骨折するリスクが高まります。「足」には多くの筋肉が存在します。蓄積された筋拘縮により硬くなった筋肉が骨に圧迫ストレスをかけています。予防には、サッカーのプレーの前後に裸足でジョギングをしたり、足趾ケア、足首回しなどを実施し、「土台となる足の本質的な再生」が必須です。
筋肉トレーニング・体幹トレーニング
適切なタイミングと適切な目的があれば、私たちは筋肉トレーニングを完全否定はしません。しかし、多くのプロアスリートの現場では、「筋拘縮の蓄積」という現象を認識していないがために、筋肉トレーニングがパフォーマンスの向上を実現するどころか、選手を怪我と隣り合わせの危険な状態に追い込んでしまっています。
シーズンオフなどの強化期間において筋肉トレーニングを取り入れるのであれば筋拘縮を取り除く必要があります。
もし、筋拘縮の蓄積が少ないニュートラルな状態とは程遠い場合、筋肉トレーニングは體にとって筋拘縮を増やす無用な負荷にしかなりえません。たとえ見た目の筋肉が増えたとしても実際は機能不全に陥っている筋肉も増えているので、思ったほどパワーもキレも高まりません。逆に、弊害としては、以下のようなものが考えられます。
1. 可動域制限
筋拘縮が増えることで、可動域制限が起きて怪我を誘発しやすくなります。
2. 燃費効率の悪い体
筋肉量は骨格とは無関係に増やすことができます。筋肉量が増えれば稼働するために必要なエネルギーも増えます。筋持久力を高めなければとても燃費の悪い體になってしまいます。
3. 血行不良と疲れやすさ
筋拘縮が増えると毛細血管が圧迫されて血行不良に陥ります。血流が悪化すれば栄養分の吸収は阻害され、その一方で疲労物質が流れ難くなり疲れが抜けなくなります。この症状が悪化するとオーバートレーニング症候群になってしまうことさえあります。
テーピングやサポーター
テーピング技術の発達やサポート用具の進化には目を見張るものがあります。そして、今やウォームアップでのストレッチは欠かせない動作の一つになっています。
しかし、私たちは、なぜテーピングやサポーターが必要不可欠な怪我予防の用具になったのかを考えます。テーピングをすれば可動域は制限されます。可動域の制限はプレー精度、パワー、キレなどに悪影響を及ぼすのは火を見るよりも明らかです。それでもテーピングをする理由はなぜでしょうか?
怪我の再発防止や、弱った筋肉の補強という意味合いが強いのではないでしょうか。もしかするとテーピングをしないと軽い炎症が起きてプレー後に患部が腫れてしまうからかもしれません。こうした予防策は人體を本来あるべき健康な状態に保つための本質にアプローチできていますか?
筋肉には骨格を動かすための役割とともに、外部の衝撃や不意の異常可動から身を守るための緩衝としての役割があります。筋拘縮が極めて少ないニュートラルな状態では、足をひねっても簡単に捻挫はしませんし、膝関節が痛むということもありません。
スポーツを始めた子どものころを思い出してください。テーピングをガチガチに巻いていましたか?きっと柔らかく伸縮自在の足首だったと思います。そのころ膝関節が痛みましたか?屈伸運動はどうでしたか?階段の上り下りさえ楽しくて、駆け回って大人に注意されたりしませんでしたか?筋肉の状態をニュートラルに近づけるというのは、こうした子どものころのスプリングのように伸び縮みする筋肉を取り戻すということです。当然、テーピングやサポーターは必要ないですよね。
RICE処置
受傷後の処置として常識となっているRest(安静)、Ice(アイス)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)ですが、これも「筋拘縮」という概念が軽視されている中で広まった常識だと確信しています。
私たちが懸念しているのが、この中ではアイシングと圧迫です。アイシングの一般的な目的は大きくわけて以下の2つになります。
炎症をおさえる×
内出血の止血○
ここで炎症をおさえるのが×な理由は、炎症は自然治癒のための生理現象だからです。炎症によって細胞から生理活性物質であるヒスタミンやプロスタグランジン放出されます。このヒスタミンに反応して、免疫機能をつかさどる細胞であるマクロファージが集まり傷によって侵入した細菌や異物を捕食して掃除します。そしてプロスタグランジンは血流を促進し、細胞の修復や成長に必要な物質を集めてくれます。もし、アイシングして炎症をおさえてしまうとどうなるでしょうか?たしかに、プロスタグランジンが出なくなり二次酸欠を防げるので痛みは和らぎますが、肝心の傷の回復や筋肉の成長に悪影響が出てしまいます。
では、内出血はどうでしょうか?
打撲
骨折
肉離れ
この中で、はっきり腫れが視認できればほぼ内出血していると思われます。 10分間、氷水で冷やして温める。これを3回繰り返して終わり。これ以上やると、筋肉がどんどん硬くなり患部以外にも後遺症(筋拘縮)が残ります。アイシングしすぎると軽い凍傷にかかることさえありえます。
一方、注意が必要なアイシングで代表的な怪我が捻挫です。膝にしろ足首にしろ、筋拘縮が増えている選手は関節の可動域が極端に制限されています。そのため、すこしひねっただけでもひどく発痛することがあります。このアクシデントでさらに突発性の筋拘縮が起こり、患部が腫れることがあっても、実はひどい内出血はなく厳密に言えば筋断裂や筋挫傷はおきていないと考えられるからです。
必要ない怪我の治療で何でもかんでもアイシング(冷やす)していたらどうなりますか?昨今のように夏場での熱中症の重篤化のニュースを目にすれば体を冷ますべきと考えてしまいがちですね。しかし、人體というのは温めて免疫力を高めています。風邪のときの高熱、低体温症候群、温泉治療、そして炎症。全て、體が温まることで改善したり治癒しようとしています。子どもの平熱が37度を超えているのはなぜでしょうか?お風呂の湯船に浸かっていると筋肉がほぐれてリラックスできるのはなぜですか?
この構図を覚えておいてください。足首の捻挫での不必要なアイシングは、次の項でご説明するプロアスリートの成功をも左右する前十字靭帯断裂の遠因になりかねません。
ここまでは、筋拘縮という観点からRICEのデメリットを説明してきました。
私たちが着目しているのは、RICE理論の提唱者であるDr. Gabe Mirkin(以下、博士)が2014年に投稿した「Why Ice Delays Recovery」というタイトルの記事です。この記事で博士が、冷却することがダメージの回復を遅らせることを認めたことが話題になりました。
博士は記事の中で、
冷却は腫れの進行を遅らせる効果はあるが、筋肉のダメージの回復を早めないこと 冷却と圧迫の組み合わせが、圧迫のみより効果的であるというエビデンスはないこと
という過去の自分の理論を否定する事実が、最近の学説により支持されていると明らかにされました。
また、私たちがこれまでお伝えしてきたように、自然治癒のために不可欠な生理現象としての炎症を無理に抑えてしまうことのデメリットにも触れられています。
抗炎症作用のある医薬品や免疫抑制剤など直接的な手段はもちろんのこと、
炎症細胞が放出するInsulin-like growth Factor(IGF-1)というホルモンが治癒プロセスを補助するにもかかわらず、冷却することでIGF-1の放出が妨げられ治癒が遅れる
冷却することで血管が収縮し、炎症プロセスの治癒細胞を運ぶ血流を締め出してしまう
といった学説を引用し、冷却が自然治癒を妨げる可能性が高いことも説明されています。
世界中のトップアスリートの間で、いまだにRICEが日常的に実践されていることが、怪我が減らない原因の一つと確信しています。